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2007/04/20

『樅ノ木は残った』

読書ネタは久しぶり。2か月近くも本書と格闘していたからだ。言わずと知れた山本周五郎の代表作である。同氏の名を冠した文学賞を受賞した稲見一良が、その受賞スピーチで本作のことを「日本最高、最大のハードボイルド」と絶賛していたと知り、10年以上も前に(当時も多分誰かの薦めで・笑)買ったまま「積ん読」状態になっていた文庫本を引っ張り出して読んでみた。

読むのに相当な時間を要したのは、文庫本で1100頁を超える大作ということもあるが、登場人物が非常に多くて人間関係が入り組んでいる上に、職名や地名だけで人物が表記されることが多く、頭の中が混乱してしまったからだ。ただ、そこはインターネットの有難さで、周五郎ファンの人のサイトに登場人物一覧表が載っていたのでずいぶん助かった。

4月19日の練習内容 軽いビルドアップ10キロ
4月20日の練習内容 ジョグ10キロ

以下、版元解説。

仙台藩主・伊達綱宗、幕府から不作法の儀により逼塞を申しつけられる。明くる夜、藩士四名が「上意討ち」を口にする者たちによって斬殺される。いわゆる「伊達騒動」の始まりである。その背後に存在する幕府老中・酒井雅楽頭と仙台藩主一族・伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。この密約にこめられた幕府の意図を見抜いた宿老・原田甲斐は、ただひとり、いかに闘い抜いたのか。(上)

幕府老中・酒井雅楽頭と伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。それが、伊達藩に内紛をひきおこし、藩内の乱れを理由に大藩を取り潰そうという幕府の罠であることを見抜いた原田甲斐は、藩内の悪評をも恐れず、兵部の懐に入りこむ。そして、江戸と国許につぎつぎひき起こされる陰謀奸策、幼君毒殺の計略をも未然に防ぎ、風前の灯となった伊達家安泰のため、ひたすら忍従を装う。(中)

著者は、「伊達騒動」の中心人物として極悪人の烙印を押されてきた原田甲斐に対する従来の解釈をしりぞけ、幕府の大藩取り潰し計画に一身でたちむかった甲斐の、味方をも欺き、悪評にもめげず敢然と闘い抜く姿を感動的に描き出す。雄大な構想と斬新な歴史観のもとに旧来の評価を劇的に一変させ、孤独に耐えて行動する原田甲斐の人間味あふれる肖像を刻み上げた周五郎文学の代表作。(下)(引用終わり)

簡単に言えば、酒井雅楽頭の陰謀による仙台藩内部の政治闘争と、それが藩取り潰しの口実を与えないよう身を挺して防ごうとした原田甲斐の孤軍奮闘がテーマである。様々な人間ドラマが複雑に絡み合って進行し、最後に発火点に達するまでを克明にそして緻密に描いていく。

クライマックスの兵部邸での評定の場面は、一行一行噛み締めるように読んだ。淡々としたドキュメンタリー風に書かれていながら、さながら悠然たる大河が滝となって轟々と流れ落ちるかのような結末に、言葉も出ないくらい打ちのめされた。これまで読んだどんな本でも味わい得なかった種類と大きさの感動だった。

さりげなく置かれたエピソードも興味深い。原田甲斐が「くびじろ」という大鹿と格闘する場面や、広瀬川で鯉を釣る場面などは、いかにも稲見一良が好みそうだ。

他にも、甲斐と周防の終生変わらぬ友情、甲斐を慕う女性たちのことなど、書きとめておきたいことは多いが、小説の巨きさに圧倒されて、自分の中でまだ十分に消化できていない状態だ。上記サイトに「読後も余韻が残る小説」とあるが、おそらく年月が経っても折りに触れて思い出すことになるだろう。

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