『カサブランカ』
ご存じ、ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン主演の名画である。英語の勉強ということもあるが、最近続けて読んでいる稲見一良の本の中にボガート主演の別の映画の引用があって、本当はそれを観たかったのだが、レンタルDVDがなかったので、とりあえずもっと有名なこちらの方を先に観てみた。
まず、英語の勉強という意味ではかなり難易度が高かった。なにせボガートはじめ登場人物の英語が早口で、英語字幕のカバー率がざっと7~8割ぐらい。日本語字幕に至っては半分程度という感じである。ちなみに、かの有名な「君の瞳に乾杯!」というセリフは、映画中なんと4回も出てくるが、原文では "Here's looking at you, kid." とある。これはどう捻くり回しても「君の瞳に乾杯」とはならないだろう。翻訳史上に残る創作と言ってよいと思う。
あまりに有名な作品なので、内容についてはあちこちで既に書き尽くされているだろうから、ここでは結末についての個人的な感想だけを記しておきたい。(ネタバレ注意)
2月24日の練習内容 ジョグ10キロ
2月25日の練習内容 LSD20キロ
リック(ボガート)は、昔の恋人イルザ(バーグマン)の夫で反ナチス運動家のラズロ(ポール・ヘンリード)を警察署長のルノーに逮捕させ、自らはイルザと逃げるという算段をしながら、結局はこの夫妻をリスボン行きの飛行機に乗せ、自らはカサブランカにとどまることになるのだが、なぜそうなったのか。
それは、リックのラズロに対する態度が大きく変容していったからではないか。当初、パリ滞在時の恋人で最後には裏切られたイルザの現在の夫であるラズロに激しく嫉妬していたリックだったが、パリでの裏切りの真相をイルザから聞かされるとともに、自身ラズロと接するうち、自らの cause (主義、主張)の実現のために不屈の闘志を燃やすラズロの、言わば侠気(おとこぎ)に次第に魅せられていったのだと思う。恋愛感情を超えて、一人の男として嫉妬せざるを得なくなったのだ。
これだけの男に惚れ込んで、その理想を実現するための一翼を担うことになるのなら、それがイルザにとって一番幸せなことなのではないか。その夢を叶えてやることこそ、彼女をかつて心底愛した自分の使命に他ならない。考えに考え抜いた結論がそうだったのだ。
それよりも、ラズロを間近に見ているうちに、かつて反ファシズム運動に参加したこともあるリックの血が騒ぎ始めたに違いない。サロンで女に「今夜逢える?」と訊かれて、「そんな先のことは分からない」などと、キザで投げ遣りなセリフを吐いている場合ではない。彼は自分のサロンをあっさりと売却してしまうのだ。
リックのそんな変貌は、親ナチのヴィシー政権に表面的には協力する態度を取っていたルノーにも伝染し、土壇場でナチスの将校を殺害したリックを見逃すばかりか、これからはリックと手を携えて戦っていこうと誓うのである。ヴィシー産のミネラルウォーターを投げ捨てるシーンがそれを物語っている。
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