『猟犬探偵』
「トカチン、カラチン」以外に、流しの艶歌師に拾われた猟犬を追う「ギターと猟犬」、役目を終えた競走馬とシェパードを連れて逃亡した厩務員を追う「サイド・キック」、依頼人のストリート・ファイターの男とともに猟犬窃盗グループを一網打尽にする「悪役と鳩」の3篇を収める。
いずれも、「心優しき」男たちと竜門との交流を軸に描かれた心温まるヒューマンな物語である。「ギターと猟犬」など、ほとんど浪花節に近いという気がするが(笑)、そういうハートをうちに秘めながらも、表面はあくまでクールな表情を崩さないのが、ハードボイルドたる所以だろう。「優しくなれなければ生きている資格がない」というわけである。
それにしても、この素晴らしい物語の続きがもう読めないというのは残念でならない。普段の倍ぐらいの時間をかけて、一篇一篇じっくり味わいながら読んだ。
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