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2007/02/07

『ダック・コール』

Duck_call 稲見一良(いなみ・いつら)著。この人の名は聞いたこともなかったが、ある人に勧められて読んでみた。相変わらず主体性のないことであるが、良い本を読むのにきっかけなど何でもよいのかもしれない。カバーの紹介文。

石に鳥の絵を描く不思議な男に河原で出会った青年は、微睡むうち鳥と男たちについての六つの夢を見る―。絶滅する鳥たち、少年のパチンコ名人と中年男の密猟の冒険、脱獄囚を追っての山中のマンハント、人と鳥と亀との漂流譚、デコイと少年の友情などを。ブラッドベリの『刺青の男』にヒントをえた、ハードボイルドと幻想が交差する異色作品集。“まれに見る美しさを持った小説”と絶賛された第四回山本周五郎賞受賞作。(引用終わり)

2月6日の練習内容 完全休養
2月7日の練習内容 完全休養

作者は1931年大阪府生まれ。テレビCF、記録映画のプロデューサーを経て作家になる。1985年肝臓癌の手術を受けるも全摘できないと分かると作家活動に専念、僅か9冊を残して1994年歿。

死に直面した作者が自らの生きた証として書き残した文章は、一見何気ないようでその実隅々まで磨き抜かれており、あくまでも潔く、そして美しい。文庫本で読むのはもったいない。美しい鳥か何かのカラーグラビアを配した、凝ったレイアウトの本や高級誌で鑑賞したいものだ。例えば、国際線ファーストクラス専用の機内誌(乗ったことがないので、そんなものがあるのかどうか知らないが・笑)の巻頭に載せるのにふさわしい文章だ。

言葉の選択も全く過不足なく、必要にして十分な言葉が吟味されている。デコイの瞳を「点(い)れた」と書く作家が、果たしてどれぐらいいるだろうか。

6篇中では、少年と中年男の密猟の冒険譚である第3話「密漁志願」が最も面白かった。男の子なら誰しも、日が暮れるまで野山を駆け回って、動物を掴まえたり秘密の基地を作ったりして遊んだ思い出があるだろう。ふとしたことからパチンコ名人の少年と巡りあった中年男の主人公は、いつしかそんな少年時代に戻って、少年とともにワクワクするような冒険を企てる。そこにはもう少年も中年もない。男と男の爽やかな交流が描かれていて、思わずニンマリとさせられた。

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