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2006/11/17

『思い出トランプ』

どういう風の吹き回しか、向田邦子の短篇集などというものを読んだ。ちょっと前の新聞書評で諸田玲子さんがこの本について書かれていて、一度読んでみたくなった。相変わらず主体性のないことである(苦笑)。アマゾンの紹介文。

浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを人間の愛しさとして捉えた13編。(引用終わり)

11月16日の練習内容 ビルドアップ10キロ
11月17日の練習内容 ジョグ10キロ

トランプの札と同数の13篇のうち、最後の「ダウト」にだけは亡き父の思い出としてトランプが登場するが、全体のタイトルを『思い出トランプ』としたのはむしろ、全て登場人物も異なるこれら13篇別々の物語が、それぞれに様々な人生の断面や人間関係の綾を描いていることによるものだろう。このうちの「かわうそ」「犬小屋」「花の名前」で向田氏は第83回直木賞を受賞した。

「かわうそ」と「大根の月」が強く印象に残った。しかし、諸田氏も書いていたが、一読してよく判らない作品もある。短篇だけにストーリーはどれも単純なのだが、著者がそこに何を籠めようとしたのか、いまひとつハッキリしないのである。40代後半になっても、というか男にはなかなか判らない人情の機微があるのかもしれない。

ところで、これらの作品が『小説新潮』誌上に発表されたのは昭和55年から56年にかけてで、ちょうど私が大学を出て社会人になった時分に当たる。作中には当時の新しい風俗も登場するものの、全体の佇まいは戦後から高度成長期にかけての、いかにも「昭和」という雰囲気である。25年という歳月の経過を改めて感じさせられる。

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