『マドンナ』
5篇の中では、17歳年下の部下に惚れてしまい、同じように彼女に惚れた部下の男(28歳)と醜い争いを演じるに至る表題作「マドンナ」が秀逸。幕切れは呆気ないが、深刻な事態に至らずなぜかホッとしてしまった。
その他、息子がダンサーになりたいと言い出す「ダンス」、異動先の職場での小さな不正と戦う「総務は女房」、同い年の女性が上司になり勝手が狂ってしまう「ボス」、職場付近で見かける孤独な老人に父の面影を重ねる「パティオ」、それぞれに40代課長の日常を取り巻く人間模様が生き生きと描かれている。男40代は分別盛りでありながら、まだ青年期の未熟さをどこかに残していて、結構揺れ動く年代なのだ。
逆に、主人公の妻たちは皆、かなりのしたたか者で、時に主人公が完全に遣り込められてしまう。読みながら身につまされてしまったが、いずこも同じということか(苦笑)。
蛇足ながら、出版当時まだ売り出し中だった筈の日本ハム・小笠原や、ロッテ・黒木がさりげなく登場するあたり、著者も相当な野球好きと見た。『延長戦に入りました』というスポーツものがあるらしいので、次はそれを読んでみよう。
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