『狼花』
大沢在昌の新宿鮫シリーズ第9作。近所の図書館に速攻で予約を入れておいたおかげで早くに読めた。今からだと半年待ちとか。早く返さなきゃ(笑)。まずは版元紹介。
日本国のあり方を問う大事件の発端は、新宿中央公園でのナイジェリア人同士のささいな喧嘩だった──。
地獄を覗かされ、日本を捨てた国際犯罪者・仙田。外国人犯罪を撲滅するため、限界を超えようとするエリート警官・香田。どん底からすべてを手に入れようとする不法滞在の中国人女性・明蘭。自ら退路を断ち突き進む男女の思惑と野望が一気に発火点に到達した時、孤高の刑事・鮫島が選ばざるを得ない「究極の決断」とは?
理想と現実、信念と絶望、個人と社会、正義の意味、そしてこの国のありようが、骨太かつスピーディな物語に溶解していく。ターニングポイントとなるシリーズ最大の問題傑作、ハードカバーで登場!(引用終わり)
10月27日の練習内容 ジョグ10キロ
10月28日の練習内容 タイムトライアル10キロ(37分55秒)を含む17キロ
「日本国のあり方を問う」とは少し大袈裟な気もするが、確かに本作はバブル経済崩壊の過程で大きく変容したわが国の社会構造と、それを背景とした犯罪の増加、なかんずく外国人犯罪者の急増による社会不安にどう対処するのかといった、大変に重い課題に正面から取り組んでいる。
自らの家族が外国人犯罪に巻き込まれた香田は、既存の暴力団の勢力を利用して外国人犯罪者を排除するという、いわば「毒をもって毒を制する」奇策で突き進もうとするが、その危険性を指摘し香田の思惑に逆らう単独捜査を深める鮫島と悉く対立する。両者の丁々発止のやりとりこそ、実は本書最大の読ませどころではないかと思う。
一方、このシリーズの初期から中期にかけて見られた、息詰まるようなアクションとスピード感、常軌を逸した悪人たちの登場といった要素には乏しく、全体として「大人しい」印象を受ける。鮫島の恋人の晶の登場も、いかにも中途半端だ。版元紹介にあるように、このシリーズもそろそろ新機軸が必要なのかもしれない。
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