『祖国とは国語』
藤原正彦氏の本は2冊目である。版元新潮社の紹介は以下のとおり。
国家の根幹は、国語教育にかかっている。国語は、論理を育み、情緒を培い、すべての知的活動・教養の支えとなる読書する力を生む。国際派の数学者だからこそ見えてくる国語の重要性。全身全霊で提出する血涙の国家論的教育論「国語教育絶対論」他、ユーモラスな藤原家の知的な風景を軽快に描く「いじわるにも程がある」、出生地満州への老母との感動的な旅を描く「満州再訪記」を収録。
「国語教育絶対論」は文藝春秋に掲載された同名の論文を中心に、産経新聞等に寄稿した文章を併せて収録したもの。国語こそが全ての知的活動の基礎であり、国のアイデンティティーの根幹をなすとする氏の主張は明快で、学校教育に対する提言もまことに当を得ている。「祖国とは国語」は残念ながら氏自身の言葉ではないが、蓋し至言というべきであろう。
「いじわるにも程がある」は、お得意の軽妙なエッセー集。山本夏彦氏の思い出を綴った同名の最後の一篇が特に秀逸である。他に朝日新聞科学欄に連載されたものがあるが、朝日購読者の私は不覚にも全く見落としていた。山本夏彦氏が言ったように、「藤原正彦」なる名前があまりに平凡すぎたからかもしれない。
「満州再訪記」は、当時中央気象台の職員だった父新田次郎が新天地を求めて赴任し、そこで作者が出生した旧満州の地を老母、妻子と共に訪ねたときの旅行記である。当時の父の勤務先の建物を探し当て、そこで父の幻影を見るシーンは感動的である。それとともに、日露戦争から太平洋戦争への激動の時代にあって、各国の利害衝突の渦中に巻き込まれていく満州の運命が、大きな時代背景とともに実に見事に解説されていて、下手な歴史書よりも迫力がある。
9月8日の練習内容 休養ジョグ10キロ(59分台)
9月9日の練習内容 LSD20キロ
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