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2006/09/15

『古風堂々数学者』

藤原正彦氏のエッセイは3冊目。版元紹介は以下のとおり。

(1)武士道精神を愛して卑怯を憎み、(2)他人の向上に熱心な性向をもち、(3)論理的、合理的でないものを尊ぶ情緒の国に生まれたことを誇りとする、情に棹さしてばかりの数学者は、いかにして誕生したか。独特の〈教育論〉〈文化論〉、十八番の〈家族もの〉、皆が貧しかった時代の少年期に(1)~(3)を血肉にしていく経緯を活写した中編等、論理の美しさとユーモアが見事に和した、48編の傑作エッセイ。(紹介終わり)

教育論、文化論はこれまで読んだのとほぼ同趣旨のものだが、本職の数学についてのエッセイが6本入っていて、数学という深遠な学問の一端が素人にも少しは分かるように書かれている。従来のアカデミズムに欠けていたのはこうした努力であろう。

家族ものを中心に身辺雑感を集めた「Ⅱ」の章が出色だ。中でも、数学者である著者がエッセイを「書き始めた事情」に、父・新田次郎の巧みなリードがあったことを明かした一篇は興味深い。

最後の「Ⅴ」の章は、小学校時代の自らの体験を元にした短篇小説になっている。クラスのボスである「私」が、貧しい家庭の転校生「秀治」の傍若無人ぶりに手を焼きながらも、何とかクラス内の秩序に組み入れていく過程が生き生きと描かれている。その秩序とは「喧嘩はしてもいじめは許さない」というもので、「私」が身を挺していじめを止めさせることで定着していったのである。

昨日の新聞に「公立小学校の校内暴力 過去最多」という記事が載っていた。報告され表面化した事件の件数だけを見て一体何が言えるのだろうかと思うが、いじめの抑止力が子供たちの間で働かず、体罰を禁じられた先生も有効な手立てを持ち得ないとすれば、それこそ藤原氏の言う「武士道精神」の教育こそが必要になるかもしれない。

9月14日の練習内容 ビルドアップ15キロ
9月15日の練習内容 ジョグ10キロ

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