「ジークフリート牧歌」
私にとってのサロマのテーマ曲はワグナーの「ジークフリート牧歌」であるが、大会が終わって10日以上も経つというのに、まだそのメロディーが頭から離れないでいる。2年前に初めてサロマに出場した時、空港からホテルに向かう途中のレンタカーの車中で、レースに向けて士気を高めようとワグナーのCDを聴いていた。「ワルキューレの騎行」とか「ラインへの旅」とか勇ましい音楽は他にたくさんあったのに、どういうわけか士気とは最も関係なさそうな(笑)この曲が印象に残ったのだ。
ワグナーはこの曲を、長男ジークフリートの出産と妻コジマ(リストの娘)の誕生日を祝うプレゼントとして書いた。初演は1870年のクリスマスの早朝、室内楽団がコジマの寝室横の階段に陣取って演奏するという形で行われたそうである。事情を知らされていなかったコジマの驚きと感激はいかばかりだったろう。こんな粋なプレゼントは誰にでもできるものではない。
曲はそれに相応しく優しい愛情に満ち溢れたもので、ワグナーのコジマへの愛と、待望の息子を得た喜びを素直に表現している。なかでも私のお気に入りは70小節あたりからの箇所である。3連符の上昇音型を交えたフレーズが長いクレシェンドで徐々に高まっていき、79小節のフォルテで一旦頂点を迎える(以下、スコア参照)。その後、少しディミニュエンドして収まりかけるが、84小節でまた急に愛しさが込み上げてきたかのように、今度は短く急激なクレシェンドで85小節の2度目の頂点に至る。
一旦引くと見せておいて、不意を突いて2段目の波状攻撃を仕掛けるところがたまらなくいい。コジマはもともと指揮者ハンス・フォン・ビューローの妻だったのを、ワグナーが横恋慕の挙句に奪い取ったのだが、その過程ではこういう恋の駆け引きもあったに違いない(笑)。
通常の管弦楽で演奏するのが一般的だが、私が愛聴している演奏はワルター・ウェラーをリーダーとするウィーン・フィルのメンバーによるオリジナル室内楽版の演奏で、ショルティ指揮のワグナー名曲集2枚組に収められていたものだ。温かくアットホームな雰囲気がよく表現されている。
ところで、この曲がなぜウルトラマラソンと合うのだろう。自分でもさっぱり分からない。
7月6日の練習内容 ジョグ10キロ
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コメント
大変ご無沙汰です。Cl吹きランナーNO.2です。(もちろん、NO.1は”まこてぃん”さんです。)
ジークフリート牧歌いい曲ですよね。確かFl、Ob、Fgは1本しかなかったはずですが、我々のClは2本ですよね。
この音楽を聞いていて、澄みきった清浄なメロディーは、どう表現していいかわかりません。きっと、サロマの雄大な自然には、ピッタリだったと想像します。
こんないい曲を聞きながら、サロマを走れるのは、非常にいい贅沢ですね。(と言いながら、私は100kも走れません。)
サロマお疲れ様でした。数年後に、私もチャレンジできればと思います。
投稿: RUNClaNO.2matu | 2006/07/06 20:41
クラ吹きランナーNo.2さん
大分駅前バス停以来のお久しぶりです。
ええと、確かクラとホルンだけが2本ですね。
初演時はヴィオラとトランペットが
同じ奏者のかけもちだったとか(笑)。
それはともかく、なるほど言われてみれば
北海道の悠久の大自然のイメージかもしれません。
年をとってスピードに自信がなくなったら、
是非サロマにお越し下さい。
未知の世界が貴方をお待ちしています。
投稿: まこてぃん | 2006/07/06 23:18