NHK-FMの「ミュージックプラザ」の昨日放送分の録音を今朝の通勤電車で聞いていたら、ブルックナーの交響曲第4番変ホ長調「ロマンチック」の、ノヴァーク版による演奏(デニス・ラッセル・デイヴィス指揮リンツ・ブルックナー管弦楽団)が入っていた。
毎度おなじみの曲なので、気分よくウトウトできると思っていたら、どうも冒頭から様子がおかしい。メロディはいつもの「ロマンチック」なのに、細かい音形やオーケストレーションが大分違う。そのうち、全く聞いたことのない旋律が入ったかと思うと、また聞き覚えのある箇所に舞い戻ったりする。まるで、いつも通る道の抜け道か旧道を発見してふと迷い込み、時折元の道に戻りながら進んでいる感じ、と言えば近いだろうか。
第2楽章に入るとかなり様相が異なってくる。おや、ひょっとして道を間違えたか。第3楽章は全く別の音楽に差し替わっている。いかん、完全に迷い子になってしまった。第4楽章ではまた聞き慣れたメロディが出てくる。やれやれ、何とか目的地には向かっているようだ。だが、「タン、タン、タタタ」という4分音符2つ+2拍3連符というブルックナー特有のリズムが、ここでは何と4拍の5連符(!)になっている箇所がある。
驚いて後で調べてみたら、これはノヴァーク版でも「第1稿(1874年)」と呼ばれている版のようである。このデイヴィス盤以外ではエリアフ・インバルやヘスス・ロペス=コボスによる録音もあるらしい。ブルックナーの交響曲については、同じ曲でも原典版や改訂版などいくつもの楽譜が存在することは周知の事実だが、多くの場合、ある箇所が半音違うとか、シンバルが入るかどうかといった、一般の鑑賞には僅かな違いであり、私自身あまり普段は気にしていなかった。
しかし、この「ロマンチック」の第1稿は全く次元を異にする。先ほどの道の譬えで言えば、今広く演奏されているのが観光用に整備された道路(ロマンチック街道?)だとすれば、この第1稿は今はあまり人の通らない旧街道を行くような味わいがある。ことに、初めて聞く第3楽章は野趣たっぷりの音楽で、なかなかに楽しめた。
同時に、この交響曲が第4番という若い番号ながら、後期のそれに並んで愛聴される名曲である理由は、この第1稿でも十分窺える元々の素材の良さが、後年の入念な推敲(否、むしろ改作というべきか。例、第1楽章再現部のフルートソロ!)によって芸術的完成度を高めたからであることが、これでよく理解できる。
逆の言い方をすれば、今を時めく美人女優の、垢抜けない中学生時代の写真を思いがけなく見て、今の面影をそこから想像するようなものか。いかん。ブルックナーの名曲を聞いて、こんなオヤジ度満点の感想を書くとは。おお嫌だ。我ながら歳は取りたくないものだ(苦笑)。
7月18日の練習内容 完全休養
7月19日の練習内容 ジョグ15キロ
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