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2006/05/25

N響大津公演

昨日はNHK交響楽団大津公演を聴いた。奈良、和歌山、大阪と回ってきた関西巡業の最終日で、曲目はモーツァルトのドン・ジョヴァンニ序曲、ブルッフのVn協奏曲ト短調(独奏徳永二男)、ブラームスの交響曲第1番で、指揮は外山雄三。

定番中の定番のようなプログラム。N響の身内だけで固めた出演者。普通なら食指が動かないような演奏会で、それも奈良や大阪でなく、わざわざ大津くんだりまで聴きに行ったのはなぜかといえば・・・

Biwako_1ズバリ、このびわ湖ホールに一度行ってみたかったからというだけの理由である(笑)。関西初の本格的オペラハウスとして数年前にオープンしたこのホールのことは以前から気になっていたのだが、外国のオペラハウスの引越し公演だとチケットが数万円もするので、なかなか足が向かずにいた。最近、たまたまラジオを聞いていてこの演奏会のことを知り、とりあえずオーケストラコンサートでびわ湖ホール初体験を果たそうと考えた次第である。

Foyerホールの外観は写真で見るよりも迫力がある。水辺に佇む巨大モニュメントのようなオペラハウスということで、シドニーのそれを意識したものと思われる(って、行ったことないけど・笑)。ロビーから眺める琵琶湖の夕景もなかなかのものだ。ホール内部は撮影できなかったが、外観からすると意外に小振りで、NYメトロポリタンの6~7割ぐらいの容積かと思われる。しかし、このぐらいのサイズが、多分イタリアあたりの伝統的なオペラハウスの大きさなのだろう(って、行ったことないけど・笑)。

ホールの内装には木がふんだんに使われていて、響きは柔らかく残響時間もかなり長い。1階席中央やや左あたりで聴いたが、モーツァルトの序曲の弦の細かい音符がやや不明瞭に感じられた以外は、低音から高音までバランス良く、非常にまとまった響きである。外来オペラにも評判が良いというのも頷ける。

さて、演奏の方は、さすがにN響だけあって大変に「上手い」ものだった。弦は分厚いベースから流麗なヴァイオリンまで実に良く鳴り、そこに管楽器奏者たちの惚れ惚れするようなソロがぴたりと決まる(オーボエ、クラリネット、そしてホルン!)。二流のオケだとガサガサした響きになりがちなブラームスでも、各声部が細部に至るまで彫琢され、複雑な和声進行も明晰そのものである。圧倒的なフォルティシモでもこれほど響きが混濁しないブラームスというのは、これまであまり聴いた記憶がない。

しかし・・・。

正直言って、「だからどうなの?」という感じなのだ。確かに上手い。でも、胸に迫り来るものが全くないのである。1箇所だけ例を挙げると、ブラームスの終楽章序奏部で弦が上下に分かれてピチカートで掛け合いをするところがある。普通、ここでアチェレランド(次第に速く)して、緊迫感を醸し出すところなのだが、この加速の仕方がまるで定規で測ったような精密さなのである。人間の感覚からすれば、「揺れ」というか「破れ」というか、法則性から外れたところにこそ緊迫感を味わうと思うのだが、こういう予定調和的な演奏では感興が湧かない。

これと全く対照的な演奏を挙げるとすれば、ミュンシュ指揮パリ管盤であろう。音楽院オケから改組されて間もなくのパリ管はまだ荒削りな印象で、アンサンブルの精度だけで言えば昨日のN響の方が明らかに上だ。しかし、演奏を聴いていて、次はどんな風に展開するのだろうというワクワク感、スリルという点からすれば比較にならない。もっと極端に言えば、故山田一雄が77年1月にK大学オケを指揮した、技術面では比較にならないぐらい下手な演奏ですら、昨日のN響よりも強い印象を残したのである。

外山氏の音楽性がどうこうと言いたいわけではない。作曲家でもある氏の楽曲分析力と、それを現実の音にしてみせる手腕は驚嘆すべきものである。しかし、聴衆を真に感動させる音楽とは、それだけのものではないということなのだ。

昔、お世話になっていたクルマ屋の人がトヨタのマークⅡについて語った言葉を思い出した。
 「これほど良く出来たクルマは珍しいです。でも、これほど面白くないクルマもまた珍しいです」

5月25日の練習内容 ビルドアップ15キロ

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