ブラヴォー、クリストフ!
今日はディープな音楽ネタで(笑)。
新学期が始まった。春休みでダラケきっていた子供たちの生活が正常化するのは良いが、朝の電車が急に混んできて閉口している。この時期になるといつも決まって聴きたくなる曲がある。ブラームスの交響曲第3番ヘ長調作品90である。もう30年近く前になるが、そこのオーケストラに入りたい一心で受験勉強に励んで某大学に入学した春、入学式よりも先に足を運んだ練習場では、諸先輩が6月の定期演奏会で演奏するこの曲を盛んに練習していた。
その時の高揚した気分そのままのような躍動感ある第1楽章の主題は Frei aber Froh (自由に、しかし楽しく)のモットーから取られたという。クラリネットのソロから始まる優美な第2楽章。哀愁溢れる旋律がポップスにも編曲されて有名な第3楽章。一転して北ドイツの荒涼とした冬空に雷鳴が轟く様子を思わせる第4楽章は、最後は第1楽章の主題をやさしく回想し、トランペットがこの曲の象徴ともいえる高いF音を奏で、彼の交響曲で唯一静かに終わる。先輩たちは何とも渋い曲を取り上げたものだが、当時このオケでは4期に亘ってブラームスの交響曲全曲ツィクルスを行なっていた。その年の冬の定期では最後に第4番を取り上げ、幸いなことに自分もその演奏に加わることができた。
今回聴いたのはドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団による演奏。この前、高橋さんとこのオケの話題で盛り上がったので選んでみた。セル指揮のLPもあるが、まずレコードプレーヤーの上のガラクタを片付けないと蓋が開かないので面倒なのだ(笑)。
春の宵、遥か昔の青春時代を回想しつつ半分ウトウトしながら聴くつもりでいたら、冒頭の数小節で何か違和感を感じた。気になってもう一度最初から聴いてみたら、原因はティンパニの叩くリズムだった。3小節目、4小節目に低いF音のトレモロがあるのだが、普通は4拍のトレモロとして演奏する(少なくとも耳にはそう聴こえる)ところを、4拍目をトレモロでない独立した音符として改めて叩いているのだ。
そんなことは書いてないだろうと思ってスコアを引っ張り出してみて驚いた。実際その通りだったのだ。4拍目の4分音符のFにはトレモロ記号はなく、しかも前の付点2分音符(トレモロ)とはタイで結ばれていないのである。だから、この演奏のようにトレモロは3拍だけで、次の4分音符は改めて叩き直さないといけないのだ。今の今まで気がつかなかった。
俄然興味が湧いて、手元にある他のLPとCDを全部チェックしてみた。古い順に、ケンペ指揮ベルリンフィル(私の「刷り込み」盤・笑)、セル指揮クリーヴランド、カラヤン指揮ベルリンフィル(64年)、バルビローリ指揮ウィーンフィル、ケルテス指揮ウィーンフィル、ヴァント指揮北ドイツ放響(83年)、小澤指揮サイトウキネン。結果は、僅かにヴァント盤の3小節目がやや不明瞭ながらそういう奏法に聴こえた(4小節目は一般的なトレモロになっている)だけで、他の演奏は全部、少なくとも自分の耳には4拍のトレモロのように聴こえた。
なぜなのだろう。昔からの演奏慣習なのだろうか。だとしたら、ドホナーニが敢えてそれに異を唱えたのにはそれなりの理由があるはずだ。思うに、ティンパニが4拍目をきっちり叩くことで、そこが4分休符になっているヴァイオリンの主旋律の動きを明瞭に浮かび上がらせる。それがブラームスの意図ではなかったのか。ドホナーニは前から好きなアーティストの一人だったが、また見直した。
4月10日の練習内容 ジョグ10キロ
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コメント
あ~、全く気づきませんでした!不勉強物です(^^;:・
ドホナーニは好きな指揮者でして、クリーブランドを退任したのが悔やまれます。今、フイルハーモニアでしたっけ?
私はドホナーニ・クリーブランドにセル時代の音を感じていたのですが..(^^;。
そういうわけで来週日曜は「長野」です。頑張ってきます。
投稿: FRUN 高橋 | 2006/04/10 23:02
高橋さん
お約束のコメント、ありがとうございます(笑)。
ドホナーニは仰るようにフィルハーモニア首席のほか
2004年から北ドイツ放響の首席(ヴァントの後任?)
にも就任していますね。
↑に書いたNDRのティンパニは、もちろんドホナーニ
就任前のことですが、偶然にしては出来すぎ?
ちなみにクリーヴランドのシェフは今、
フランツ・ヴェルザー=メストです。
よほど独墺系がお好きなようで・・・(笑)。
いよいよ長野ですね。健闘をお祈りします。
投稿: まこてぃん | 2006/04/11 10:46