エイミー・ビーチを聴いて
エイミー・ビーチ(Amy Beach, 1867-1944)はアメリカの女流作曲家、ピアニストで、ボストンを拠点に作曲、演奏活動を行った。管弦楽曲、室内楽曲、ピアノ曲、合唱曲、歌曲など広範なジャンルに亘り約300曲もの作品を残していて、そのほとんどが出版、演奏されたという。
私は寡聞にしてこの作曲家の名前すら知らなかったが、先日NHK-FMの「ミュージックプラザ」で紹介された「ピアノ五重奏曲」がとても印象深かったので、アメリカのアマゾンからCDを2枚取り寄せて聴いてみた。
1枚はこの五重奏曲に「フルートと弦楽四重奏のための主題と変奏」、「ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重奏曲」を組み合わせた室内楽集(英シャンドス・写真上)、もう1枚は「ピアノ協奏曲」と「交響曲(ゲール風)」を収めたものである(米ナクソス・写真下)。
アメリカの作曲家というと、グローフェ、ガーシュイン、コープランド、近いところではバーンスタインといったあたりが頭に浮かぶが、ジャズや黒人霊歌、ラテン音楽の要素を取り入れた、親しみやすい反面どちらかというとハデで外面的な音楽づくりが、彼の地の国民性にも合致して主流を占めているように思う。
しかし、ここに聴くビーチの音楽は、前記の作曲家たちよりひと世代前というせいもあるが、全く異なっている。驚いたことにドイツロマン派の音楽そのものなのである。「ピアノ五重奏曲」は嬰ヘ短調という調性からして作曲者が念頭に置いたに違いないブラームスのヘ短調のそれを髣髴とさせるし(第2楽章が特にロマンチック!)、「交響曲」はアイルランドの民族音楽を題材にしたというテーマの親近性と、冒頭楽章が同じ8分の6拍子で書かれていることから、メンデルスゾーンの「スコットランド」を連想させる。
また、自ら優れたピアニストでもあった作曲者自身がボストン交響楽団と初演した「ピアノ協奏曲」は、同じくドイツロマン派の流れを汲むグリークのそれのような抒情的な味わいがある(ピアノの最初のカデンツァが非常に印象的だが、アマゾンのサンプルには入っていない。残念!)。
しかし残念ながら、こうした彼女の音楽はやはりアメリカにおいては作曲者の生前ですら「古臭い」と受け取られていて、その死後はほとんど無視され、歴史に埋没してしまっていた。近年ようやくビーチ再評価の動きが出て、日本でも彼女の作品を集めたコンサートが開かれたようだ。いわゆる「隠れた名曲」など存在しないというのが私の持論だったが、少し考え方を改めさせられたCDだった。
3月 9日の練習内容 ペースラン10キロ(キロ4分30秒程度)を含む12キロ
3月10日の練習内容 ジョグ10キロ
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