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2005/10/07

『レディ・ジョーカー』

髙村薫著。毎日新聞社刊。99年「このミス」第1位。上下合わせて869頁もの大作である。版元紹介は簡単すぎるので、以下はアマゾンに転載された「BOOK」データベースの紹介文。

人質は350万キロリットルのビールだ――業界のガリバー・日之出麦酒を狙った未曾有の企業テロは、なぜ起こったか。男たちを呑み込む闇社会の凄絶な営みと暴力を描いて、いま、人間存在の深淵を覗く、前人未到の物語が始まる。(上)
犯罪が犯罪を呼び、増殖し続けるレディ・ジョーカー事件。犯人たちの狂奔と、それを覆い尽くす地下金融の腐臭は、いつ止むのか。そして、合田雄一郎を待つ驚愕の運命とは――高村文学の新たな頂点を記す、壮大な闇の叙事詩、ここに完結。(下)

10月6日の練習内容 ジョグ10キロ(西京極)
              1日早ければパープルサンガ戦でエライ目に遭うところだった。              
10月7日の練習内容 バイク60分(ジム)

この小説は、かのグリコ森永事件を題材にしたものである。舞台は同じ食品会社でも大手ビール会社「日之出麦酒」に変えられているが、社長の誘拐とあっけない解放で幕を開け、食品会社の生命線である商品の安全性を人質に企業を恐喝する手口は全く同じである。

裏取引によって日之出から20億円もの現金を奪い取ることに成功した犯人グループは、元々は競馬場の常連客同士だった。それぞれが社会に対する鬱屈を抱えた5人の男達は、富と権力の象徴たる大企業から金をせしめるという一点のみで結束。犯罪史上例をみない特異な誘拐・恐喝事件という大博打を仕掛けたのだ。

脈絡のない個々、脈絡のない動機、脈絡のない目的が、ある日どこかで出会い、便宜的に金で結束し、同床異夢の凶悪な社会犯罪を世に送り出している。レディ・ジョーカーはそういう集団だ。(下巻176頁)

なるほど、言われて見ればグリコ森永事件の「かい人21面相」というのは、そういう意味であったのかもしれない。

いわゆる推理物ではなく、事件発生の発端から関係者それぞれの視点で同時並行的に事件の進展が描かれていくスタイルであるが、事件を追う警察とマスコミの動きが克明に描かれているのは当然としても、日之出の過去の弱みを握り、この機会を千載一遇のチャンスと動き出す総会屋筋、そこに繋がる有力政治家、さらには株価を操作して一攫千金を狙う地下金融グループの暗躍ぶりなどがリアルに描かれ、事件は日本社会の深奥に潜む「闇」の部分へと、底知れぬ広がりと深さをもって進行していく。

トリビアをひとつ。作品中ただ1箇所だけ、「江崎グリコ」という固有名詞がさりげなく登場する(下巻424頁)。むろん、物語の本筋とは全く関係ないが。

なお、この作品は昨年映画化され、もうDVDも出ているようだ。できればこの連休中にでも観ておきたいものだ。

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