『撃つ薔薇 AD2023涼子』
しつこく大沢在昌である(笑)。例によって版元紹介文。
西暦2023年、東京は多国籍化・複雑化した組織犯罪が凶悪を極める灼熱の坩堝だった。警視庁は対策の切り札に潜入捜査専門の特殊班を新設。厳選された捜査員の中でも、最も危険なのが「涼子」だ。自分の過去を拒み、美貌を拒む彼女の捜査ぶりは、苛烈で非情だ。その過酷さ故2年に限定された勤務期間での、彼女への最終任務の指令は、謎の麻薬組織への長期潜入だった。巧妙に潜入した彼女を待つ、組織内での殺人、対立組織との激しい抗争。さらに狡猾な罠が彼女を狙う!敵は、味方は、組織のボスの正体は?そして絶望的な状況の彼女を救う愛の行方は!?迫力と哀切の長編ハードボイルド傑作!!
以下、また少々ネタバレ。
9月12日の練習内容 ジョグ10キロ
北朝鮮を思わせる「祖国」の崩壊から日本に脱出した「将軍」を社長とする謎の麻薬組織に潜入捜査に入った涼子は、『天使の牙』シリーズのアスカをさらにパワーアップしたような美しくもタフな女刑事である。その苛烈ぶりは登場人物をして「ガラガラ蛇みてえな女」と言わしめる。
その涼子がベトナム人・ホーを足がかりに組織の内部深く潜入し、ついには頂点の社長に辿りついて組織の全容を解明するまでをスリルたっぷりに描く。アスカシリーズの二番煎じかと思っていたが、どうしてなかなかの傑作である。映画化にも十分耐えると思う。なかでも印象的だったシーンを2つ。
①小説は西暦2023年の東京という設定になっているが、何箇所か登場する舞台の中で、再開発計画が頓挫しゴーストタウンと化した高島平団地が、産業廃棄物に埋もれ、様々な犯罪が野放しの無法地帯となっている様子が詳細に描かれている。作者の卓抜な想像力に舌を巻く。
②涼子は作戦上のミスからホーを死なせてしまうが、ホーは自分を殺した犯人の手がかりをパソコンに残していた。亡くなったホーの部屋で涼子がそれを解読して涙するシーンは感動的である。
ところで、あとがきによるとこの小説はTVゲーム「アンダーカバー」を続篇とする正篇として構想されたものである。最後の戦闘シーンで重傷を負った涼子は、2年後、今度は「鮫島ケイ」として生まれ変わったようで(?)、李建という刑事とペアを組んで新たな任務に就くというところで本篇は終わっている。
続篇はゲームでどうぞということだろうが、5年ほど前に発売されたこのゲーム、ネット検索してみると中古市場では500円ぐらいで売られている。値段から察するにゲームとしてはあまり出来が良くなかったようだ。しかも、セガのドリームキャストではどうしようもない。続篇の方もできればノベライズしてほしいものだ。
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