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2005/08/05

『天使の牙』

しつこく大沢在昌である。しかし、柳の下にドジョウはいた。『新宿鮫』シリーズとは少し違ったテイストだが、こちらもかなり面白い。以下は、例によって版元の紹介文。上下を適当にまとめてある。

戦慄の新型麻薬を日本全土に蔓延させようと謀る強大な犯罪組織「クライン」。その絶対的な独裁者・君国辰郎の愛人・神崎はつみが逃亡。警視庁の芦田は女性刑事・河野明日香に、組織壊滅の切り札・はつみの護衛を極秘に指令する。明日香は単身はつみに接触。が、潜伏する二人に戦闘ヘリの銃弾の嵐。警視庁内部に裏切者か!? しかし、奇跡が! 美しい肉体に強い精神を移植した女・アスカの誕生だ。芦田はアスカを囮に再び組織壊滅を狙う。今度、彼女を護衛するのは明日香の恋人・古芳刑事。だが、古芳はアスカを明日香に死をもたらした原因と信じ、アスカは古芳に裏切りの疑惑を。疑心暗鬼に陥り不協和音を生じる二人に、警視庁内部の裏切者が放った刺客がつけ込む。一方、君国も、怜悧で冷酷、殺しを愛する男・神を送った。神は容赦なく確実に二人を追いつめていく。殺戮の血の雨の中、二人の逆襲はなるのか!? 緊迫した物語の果てに待つクライマックスは、読者を強く動かすだろう。興奮と感動のハード・アクション巨編傑作。

さすが商売だけあって、うまく纏めてるわ(笑)。

8月5日の練習内容 ジョグ15キロ(シャワーのちサウナ。終わってからの銭湯の話ではない・泣。)

最初のうち、男まさりの婦人警官・河野明日香のキャラクターに魅せられて読み進んだが、はつみと一緒にいるところをクラインの一味にヘリで狙撃され(このシーンがまた凄い)、はつみもろともあっさり殺されてしまったときは、この先一体どうなることかと思ったが、そこからがこの小説の(脳)ミソだ。

『新宿鮫』シリーズのような推理物の要素はあまりなく、ストーリーは至って単純である。警察内部にも協力者の網を張り巡らせたクラインに対する、芦田・アスカ・古芳のほとんど孤立無援な戦いの一部始終である。必死の逃走と息詰まる対決、敵の裏をかく知略と剥き出しの力の応酬が、文字通り手に汗を握らせる。

ただ、『鮫』に比べると人物の描き込みが若干弱いような気がする。例えば「鮫」の上司の桃井警部に比べて、アスカの上司の芦田課長は今ひとつ人物像がはっきりしない。仁王こと古芳にしても然り。ただ、はつみの美しい肉体に明日香の戦闘的な脳を移植した女・アスカは、現実にはあり得ない存在だが、それ故にこそ極めて魅力的なキャラクターだ。続編の『天使の爪』も早く読みたい。

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